ホルヘ・ロレンソが18年間の現役生活に終止符

キャリア通算297戦目となった19年11月の最終戦で現役ライダーとして引退。

レプソル・ホンダホルヘ・ロレンソは11月14日、最終戦バレンシアGPの開催地、サーキット・リカルド・トルモのプレスカンファレンスルームで報道陣向けの記者会見を開き、最高峰クラス203戦目、キャリア通算297戦目となるホームレース、バレンシアGPを最後に現役から引退することを発表した。

最高峰クラスのライバルたちをはじめ、家族、チーム、パッドクの関係者が集まった中、「この記者会見に来てくれて本当にありがとう。僕にとって大きな意味があり、とても幸せだ。」

「ライダーとしてのキャリアには、重要な4日間があるといつも考えていた。それは初めてレースに出走した日、初めて優勝を挙げた日、初めてチャンピオンシップを獲得した日、そして引退する日。君たちが想像している通り、その日が来たことを告げるために僕はここにいる。これが僕のラストレースとなり、このレースが終わると、プロフェッショナルなレースから引退する。」

「3歳のときに全てが始まった。僕は約30年間、このスポーツに捧げてきた。僕と一緒に働いてきた人たちは、僕がどれだけ完璧主義者で、どれだけ努力を尽くしてきたのかを知っている。非常に高いレベルのモチベーションを自分自身に要求する。僕のキャリアの中で最も輝いたヤマハでの9年間は決して忘れられず、自分のスポーツに対する高いレベルの約束を維持したかったから変更が必要だと感じた。」

「ドゥカティへの移籍は、必要と感じていた大きな後押しが得られ、結果は悪かったけど、決して諦めないという燃料のようなエクストラなモチベーションを活かして、ドゥカティのファンの前で、ムジェロでスペシャルなレースができた。ホンダとサインを交わしたときには、似たような感覚があり、全てのライダーの夢の1つであるホンダのファクトリーライダーになることを成し遂げた。」

「不運にも今シーズンは怪我が重要な役割を果たすことになってしまい、普通の体調で走ることができなかった。決してナチュラルに感じたことがないバイクを走らせることで、さらに難しいレースとなってしまった。忍耐を決して失わず、僕は闘い続けた。単純に時間の問題で、全てが正しい場所に収まると考えた。」

「しかし、光が見え始めたとき、モンメロ(バルセロナ)のテストで悪い転倒をしてしまい、その後にアッセンであの醜い転倒に見舞われてしまった。グラベル上で横転が止まったあの瞬間、『ここで何をしているんだ?これは本当に価値があることか?僕は終わった』と最初に思った。数日後、人生とキャリアについてじっくりと考え、トライすることを決断した。直ぐに意思決定を下したくなかった。」

「あのクラッシュだということは真実。僕には乗り越える壁が高すぎた。試してみたとしても、その壁を登り続けるためのモチベーションと忍耐を見つけることができなかった。僕はこのスポーツが大好き。走ることが大好き。しかし、何よりも勝つことが大好きなんだ。何か大きなことのために、タイトルを獲得するために、少なくても勝利のために闘うことができない。キャリアのこの段階で、特に前進を続けるためのモチベーションを見つけることができなかった。ホンダとの目標は、少なくても短期間では実現的ではないことに気づいた。ホンダ、特に僕を信頼してくれ、機会を提供してくれたアルベルト・プーチには、本当に残念だと言わなければいけない。」

「ある日のモンメロで僕たちは会い、『間違ったライダーとサインを交わすという間違いをしないで、僕を信じてくれ。後悔しないでしょう』と彼に言ったことを思い出す。とても悲しいことに、僕は彼を失望させたと言わざるえない。常に例外的な手段で対応してくれた横山健男さん、桑田哲宏さん、野村欣滋さん、そしてチームのみんなにも失望させてしまったと言わなければいけないけど、これは僕とチームにとって、最善の決断だと感じる。ホルヘ・ロレンソとホンダは、数ポイントを獲得するために参戦することはできない!」

「美しく、成功のキャリアに話しを戻すと、常に言ってきたように、僕はとても幸運な男だ。インド人がNBAに挑戦するドキュメンタリー、『One in a Billion(ワン・イン・ア・ビリオン)』のようだと感じるときが時々ある。キャリアの中で、同世代の並外れた多くのライダーたちとレースをしてきた。その中には、僕よりも豊富な才能を持ったライダーたちが何人もいたけど、僕ほど成功したライダーは誰一人いなかった。彼らの多くが世界選手権にさえ参戦することができず、一般的な仕事に就かなければいけなかった。キャリアを始めたときに想像していた成功を越えた。そのことをとても幸運だったと感じる。」

「確かに僕はいつも懸命に働いてきたけど、キャリアを通じて一緒に働いてきた多くの人たちの助けがなければ、正しい時期に正しい場所にいることはできず、このような成功を収めることは不可能だった。」

「だからこそ、全ての人たちに心から感謝したい。このチャンピオンシップをこれほど偉大にしてくれたカルメロ・エスペレータとドルナスポーツに感謝したい。所属したデルビ、アプリリア、ヤマハ、ドゥカティ、ホンダ、特にジャンピエロ・サッキ、ジジ・ダリーニャ、リン・ジャービス、アルベルト・プーチに感謝したい。」

「この世界に連れてきてくれた母親、このスポーツの情熱を見せてくれた父親、ここ数年間僕のために犠牲を払ってくれた全ての人たちにも感謝したい。無条件の愛を与えてくれたファンとファンクラブのみんな。パーソナルチームとして一緒に働いてくれた全ての人たち。いつも正直に忠実に対応してくれたアルベルト・バレラ。彼らみんなに心から感謝したい」と、引退を決意した理由を説明。

13位完走でラストレースを締め括った後、「今日は特別な1日だった。グリッド上では、これまでの全てのレースと全く違う感情があり、コンディションは非常に難しく、ラストレースで完走したかったから、確かに序盤はいつも以上に慎重になった。」

「レースでは自分自身の走りに集中した。幾つかのポイントを稼いで完走できたことが嬉しい。マルクの信じられないシーズンの後で、僕もチーム部門のタイトル獲得に貢献できたことは最高だ。」

「最大の敬意とプロフェッショナルな姿勢で対応してくれたホンダの全ての人たちに感謝したい。彼らの将来の健闘を祈る」と、安堵の表情を見せ、感謝の言葉を語った。

最終戦後、インドネシアのバリ島で短いバカンスを過ごし、13日には都内で開催された『HRC感謝の会』に出席。

来年5月にヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで開催される第5戦スペインGPでは、レジェンドとして、殿堂入りのセレモニーが予定されている。

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