ヤマハ発動機株式会社は、11月16日に2026年シーズンから『YZR-M1』にV型4気筒エンジンを搭載すると発表。この決定は以前から表明していた方針に沿うもので、ヤマハのエンジン開発戦略における継続性と透明性を裏付けることになる。
直列4気筒エンジンは、ヤマハのレーシングアイデンティであり、象徴的な存在として最終戦バレンシアGPまで数十年にわたり採用してきた。俊敏性とスムーズなパワーデリバリーにより、バレンティーノ・ロッシ、ホルヘ・ロレンソ、ファビオ・クアルタラロが計8回のライダータイトルを獲得。コンストラクタータイトルは5回、チームタイトルは7回、トリプルクラウンは5回を数え、グランプリ参戦429戦のうち、125勝を含め352回の表彰台を獲得。
数々の成功を収めてきたが、『MotoGP™』の進化に合わせ、ヤマハは自らの『DNA』を守りながら新たな技術的要求に適応することに挑戦。『V4』エンジンへの移行は、パフォーマンスとイノベーションの追求において重要なマイルストーンとなり、新たなエンジンレイアウトにより、加速性能やブレーキング時のハンドリング性能、最新のタイヤやエアロダイナミクスの要件への適応性の向上が期待される。
2025年シーズンを通して進めてきた迅速な開発プロセスは、ヤマハその伝統を尊重しながらテクノロジーの最先端に立つという決意が表れている。
鷲見崇宏(ヤマハ発動機MS統括部MS開発部長)
「直列4気筒エンジンは数十年にわたり、ヤマハのモノづくりの哲学の中心にありました。幾つもの記憶に残る勝利をもたらし、精密さとコントロール性において高く評価されてきました。このエンジンが成し遂げてきたこと、そしてこのエンジンで歴史を築いてきてくれた歴代のライダーたちを誇りに思います。その全員がともに手を携え、我々のレースの伝統を作り上げてきたのです。」
「しかしながら『MotoGP™』は絶えず進化しており、我々も進化していかなければなりません。『V4』エンジンはヤマハの新たな章の始まりを象徴するもので、我々が頂点に立つために必要なチャレンジ精神とレーシング『DNA』、技術的ソリューションを融合したものです。」
「目標はいつも同じ。ライダーに最高のマシンを提供し、世界中のファンに“感動”をお届けすることです。」
マッシモ・バルトリーニ(テクニカルディレクター)
「『V4』エンジンの採用は決して軽々しく決定したものではありません。ご想像の通り、開発プロセスは広範囲に及びました。加速性能からコーナリングの挙動まで、パフォーマンスのあらゆる要素を分析し、このエンジン形状こそが我々の期待に応え、アドバンテージを生み出すものだと結論付けました。」
「2025年のワイルドカードを通じて確信を得ることができました。『V4』は未だ開発の初期段階であり、これからも進化を続け、再びトップレベルで戦うために必要な力を与えてくれるでしょう。」
「直列4気筒からV型4気筒への転換は、ヤマハにとって大きな前進であり、2026年シーズンに向け、磨き続けた真のフルポテンシャルを発揮することを目指します。『V4』投入は戦略的にも重要で、2027年の技術規則に向けて、このエンジンレイアウトがマシンレイアウトやエアロダイナミクスの開発面で優位性をもたらすことでしょう。」
最終戦バレンシアGPをもって、ヤマハの象徴的な直列4気筒エンジンはその長い歴史に幕を下ろし、新たな時代へと踏み出すにあたり、11月18日のオフィシャルテストではヤマハ所属のライダー全員が『V4』エンジンを搭載したプロトタイプマシンを走らせ、エキサイティングな新たな章の幕開けを告げる。