ドゥカティ・コルセは、2月24日に今年末で2年契約が終了するフランチェスコ・バグナイアとの契約更新を発表。来年以降に向けて、1人を確保した。
将来の所属先が決定しているのは24人中4人
各メーカー、各インディペンデントチームは、チャンピオンシップの商業権を所有するドルナスポーツとの間で、2022年から5年間の参戦に関して合意、契約を締結していることから、来季2023年も12チームが参戦を継続。レギュラーライダーの枠は24。2月24日時点で、2023年以降の所属先が決定しているのは、マルク・マルケス、ブラッド・ビンダー、フランコ・モルビデリ、そして、フランチェスコ・バグナイアの4人。
ホンダ・レーシングは、2020年2月20日にマルク・マルケスとの間で、2021年から4年間の契約更新に合意。契約期間は通常、1年プラス1年延長のオプション、または2年間が支流ながら、4年契約はライダー市場に大きな衝撃を与えた。
KTMは、2021年6月1日にブラッド・ビンダーとの間で契約期間を2024年末まで延長。KTMに加入した2015年から順調にステップアップを踏み、デビューから3戦目で初優勝を挙げ、プレミアクラス挑戦4年目に初優勝をもたらしたレッドブル・ルーキーズ・カップ出身のライダーを確保すれば、ヤマハ発動機は、2021年9月16日にフランコ・モルビデリとの間で2023年末までの契約を締結。総合2位を獲得した2021年シーズンは唯一のチーム契約だったが、シーズン途中にファクトリーチームに昇格。
現王者ファビオ・クアルタラロの動向は?
ホンダ、KTM、ヤマハ、ドゥカティが将来に向けて各1人を確保した後、注目は当然、チャンピオンの動向。ヤマハのファクトリーチームを指揮するチームマネージャー、マッシモ・メレガリは、インドネシアで開催されたオフィシャルテスト最終日に、2022年末に契約期間が満了となるファビオ・クアルタラロとの交渉に関して、「我々の最優先事項です。ほぼ毎日のように彼の代理人と連絡を取り合い、我々のプログラムに従い、可能な限り早期に、合意に達する手段を見つけたいです。彼が(他のメーカーから)オファーを受けていたとしても、それは普通のことですが、我々は(契約更新に)自信があり、次の2年、もしくはそれ以上に渡って彼を維持するために、できる限りのことをします」と、複数年契約も視野に入れ、交渉を進めていることを説明。
ヤマハ発動機は、昨年9月にアンドレア・ドビツィオーソ、10月にダーリン・ビンダーとの間で、2022年末までの契約を締結。
将来を見据えて、『VR46 Riders Academy(VR46ライダーズアカデミー)』との関係を強化し、サプライチェーンとなるチーム、ヤマハ・VR46・マスターキャンプ・チームを『Moto2™欧州選手権』から中量級に昇格させ、参戦1年目となるケミン・クボ(22歳)とマヌエル・ゴンザレス(19歳)を起用するが、中上貴晶を輩出したイデミツ・ホンダ・チーム・アジア、ミゲール・オリベイラ、ブラッド・ビンダー、レミー・ガードナー、ラウール・フェルナンデェスを送り出したレッドブル・KTM・アジョにように機能するには、ある程度の時間を費やすかもしれない。
スーパーバイク世界選手権王者が転向する可能性は?
昨年6月、マーベリック・ビニャーレスとの間で契約期間を短縮し、2021年末で終了することを発表した後、スーパーバイク世界選手権に起用するトプラック・ラズガットリオグルが後任候補の1人として浮上したが、ヤマハ・モーター・ヨーロッパとトルコ人ライダーは、2年間の契約延長に合意し、2023年末までスーパーバイク世界選手権に参戦することが決定。
契約更新後、ポイントリーダーを猛烈に追い上げ、熾烈なタイトル争いの末、最終戦でチャンピオンに輝くと、年明けにはソーシャルメディアを通じて、2023年からの『MotoGP™クラス』参戦を熱望。
個人マネージャーのケナン・ソーフォーグルは、2年前からプレミアムクラスに参戦する複数のチームから打診を受けていたことを明かし、昨年12月には転向する場合は、ファクトリーチームを条件に挙げた。ラズガットリオグルは、レッドブルとの間で特別な関係があることから、来季の去就に注目が集まるが、マッシモ・メレガリは、マレーシアで開催されたオフィシャルテストの際にテストを計画していることを明かしていた。
ファクトリーチームのもう1枠は?
ドゥカティ・コルセのスポーティングディレクター、パオロ・チャバッティは、1月のチーム発表会の際に、ライダー市場に関して言及し、人選は契約下のライダーたちの中から選択する意向を明かし、「理想は4月、5月前に我々のライダーたちと合意し、ファクトリーチームとサテライトチームに配属すること」と説明。
ドゥカティとの間で直接契約を2022年末まで結ぶのは、ジャック・ミラー、ヨハン・ザルコ、ホルヘ・マルティン、エネア・バスティアニーニの4人。ミラーは残留、ザルコは昇格を狙うが、昨年新人王争いを展開した2人は、来季のファクトリーチーム入りを目指すことを冬の間に何度も強調。
バスティアニーニはマルティンをライバル視すれば、『MotoGP™ Unlimited(MotoGP™アンリミテッド)』の試写会に出席したマルティン本人は、「結果を獲得すれば、当然、次のステップはファクトリーチーム。そのために、ドゥカティレッドに身を包むために、全力でファイトする。最優先の目標であり、一刻も早く契約したいけど、他の提案に対してもオープン。常に競技面のベストオプションを望む」とスペインのメディア『Sport(スポルト)』のインタビューに応えた。
3人のドゥカティユーザー、ルカ・マリーニ、マルコ・ベツェッキ、ファビオ・ディ・ジャンアントニオはチーム契約。3人とも所属チームとは特別な関係がある。
スズキはラインアップ維持を希望
スズキのプロジェクトリーダー兼チームディレクターの佐原伸一は、今年最初のオフィシャルテスト前日に開催したチーム発表会後、今年末で契約期間が終了となる2人のライダー、ジョアン・ミルとアレックス・リンスに関して、「スズキはジョアンとアレックスを維持したいと考えています。彼らには我々の意向を既に伝えましたが、この時点で、我々にとって最も重要なことは、可能な限り最も戦闘力の高いバイクを彼らに提供できるようにすることです。彼らと一緒に、タイトル候補に戻ることを望みます。現時点で、彼らとの交渉ではなく、バイクのパフォーマンスに焦点を当てています」と状況を説明し、体制を維持したい意向を明言。
「ライダーたちと私は定期的に情報を交換しています。以前はダビデ・ブリビオがライダーたちと直接交渉していました。私の場合は、主に戦闘的なバイクをライダーたちに提供することに焦点を当てています。我々の目標は、再びチャンピオンシップを戦うことです。期限は設定していません。定期的に話し合っていますが、今は決断を下すときではありません。夏まで決まらないと思います」とフランスのメディア『Paddock-GP(パドックGP)』に応え、タイトル争いが可能な高い戦闘力を準備することが、チャンピオンを目指すライダーを説得する最も効果的な交渉材料であることを主張。
ミルとリンスは、3度のオフィシャルテストを通じて、『GSX-RR』の戦闘力が確実に高まっていることを評価。1年間不在となっていたチームマネージャーにリビオ・スッポが就任したことから、今後の交渉を受け継ぐ可能があることから、契約更新のカギとなるかもしれない。
一方で、今年最初のオフィシャルテストの際に、冬の間に噂されたジョアン・ミルの獲得について、チームマネージャーのアルベルト・プーチは、「誰の発言ですが?我々は誰からも接触を受けていません。それは確かなことではありません。シーズンのこの時期に、この種の問題を提起することは、全ての人たち、我々のライダー、そして、スズキに対する敬意の欠如です」と噂を一蹴。
一方で、今年最初のオフィシャルテストの際に、冬の間に噂されたジョアン・ミルの獲得について、チームマネージャーのアルベルト・プーチは、「誰の発言ですが?我々は誰からも接触を受けていません。それは確かなことではありません。シーズンのこの時期に、この種の問題を提起することは、全ての人たち、我々のライダー、そして、スズキに対する敬意の欠如です」と噂を一蹴。
ミル本人は「スズキで居心地の良さを感じる。僕たちは一緒に大きなことを獲得したけど、決して分からない」と応えた。
軽量級&中量級王者として最高峰クラスまで駆け上がって来たアレックス・マルケスは、年末に契約が終了することについて、「全ては僕の手中にある」と結果を追求することを宣言。中量級でタイトルを獲得したときにコンビを組んでいたダビド・ガルシアがデータエンジニアからクルーチーフに就任した。
軌道に乗ったアカデミー制度の継続
KTMがレッドブル・ルーキーズ・カップから頂点のプレミアクラスまで、モトクロスで成功したピラミッド型の一貫したプログラムでキャリアをステップアップさせる『KTM GP Academy』の哲学により、ブラッド・ビンダーとミゲール・オリベイラに続き、レミー・ガードナーとラウール・フェルナンデェスを昇格させた。
軌道に乗ったアカデミー制度の継続
KTMがレッドブル・ルーキーズ・カップから頂点のプレミアクラスまで、モトクロスで成功したピラミッド型の一貫したプログラムでキャリアをステップアップさせる『KTM GP Academy』の哲学により、ブラッド・ビンダーとミゲール・オリベイラに続き、レミー・ガードナーとラウール・フェルナンデェスを昇格させた。
昨年6月、KTMのプレミアクラス最多勝となる3勝目を挙げた後、オリベイラは契約期間が2022年末までの2年契約であることを明かし、同僚のように複数年契約を結ぶ必要がないことを打ち明けていたが、プレミアクラスでの最多勝を誇るエースライダーとして、契約を更新する可能性が高く、中量級のリザルトとパフォーマンスが評価された2人の契約期間は、公開されていないが、『KTM GP Academy』加入1年目でタイトルを獲得したガードナーと1年前倒しで昇格した中量級を僅か1年で卒業したフェルナンデェスの契約期間が1年だけだとは考え難いことから、ラインアップが継続される可能性が高い。
マーベリック・ビニャーレスを全面支援
ファクトリーチームとして活動を開始するアプリリアは、2017年から起用し、今年末に契約が終了するアレイシ・エスパルガロをチームキャプテンとして称賛。プロジェクトの中心的役割を担っているが、昨年8月16日にヤマハ発動機との契約を終了したマーベリック・ビニャーレスとの間で、更新のオプションを加えた2022年末までの契約を締結。
ワールドチャンピオンという輝かしいキャリアだけでなく、プレミアクラスで9勝を含む28回の表彰台と2度の総合3位、2度の総合4位を獲得した実績あるライダーの加入は、アプリリアに大きな刺激を与え、刷新的に改善された『RS-GP』を準備しただけでなく、フィジカルトレーナーとスポーツ心理学者を手配し、身体面と精神面を支援。
プレミアクラス8年目を迎えるビニャーレス自身も「このチームに加入した最初の瞬間から、アプリリアを『MotoGP™』のトップに導くという目的のために選ばれたことに気づいた」と、チーム発表会の際に語り、インドネシアでのオフィシャルテスト終了後には、「僕の夢は、このバイクで勝つこと。歴史上、3メーカーで優勝を挙げた唯一のライダーになることであり、アプリリアを勝利に導くこと自体がターゲットだ」と、野心的な目標を設定。アプリリアは、契約を更新するオプションを持ち、プロジェクトの中心が移行している傾向があることから、序盤の結果次第では、早々に契約が更新される可能性が高い。
中量級からの昇格は?
毎年25歳以下の若手が次々に中量級から昇格。チャンピオンシップ74年目は、王者レミー・ガードナー(24歳)、総合2位ラウール・フェルナンデェス(21歳)、総合3位マルコ・ベツェッキ(23歳)、総合7位ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(23歳)がパフォーマンスとリザルトが評価され、世界最高峰のカテゴリーに昇格するチケットをゲット。
全18戦中15勝を挙げた昇格組に続き、3勝を挙げた総合4位サム・ロウズは、5年前の2017年にアプリリア・レーシング・チーム・グレシーニからプレミアクラスに挑戦した経験があり、再度昇格する場合には、戦闘力の高いバイクを条件に挙げているが、31歳という年齢と一貫したパフォーマンスが課題。再挑戦よりもタイトル獲得を優先事項に挙げている。
注目は、軽量級のルーキーシーズンでチャンピオンに輝いたペドロ・アコスタ。契約交渉の際に、プレミアクラスに直接昇格する可能性を打診したが、最低年齢制限により出走が許可されないことから、KTMとレッドブル・KTM・アジョのチームマネージャー、アキ・アジョとの間で、中量級に2年間参戦した後に昇格する計画を企て、複数年契約を締結したが、昨年2勝を挙げたポルティマオ・サーキットで開催されたオフィシャルテストでは、オールタイムラップレコードを非公式ながらコンマ5秒以上も更新して総合1番手に進出。昨年デビュー戦で2位、翌週の2戦目でピットレーンから優勝を挙げたルサイル・インターナショナル・サーキットから始まる序盤戦で、未経験のサーキットに素早く適応し、驚異的なパフォーマンスとリザルトを再現すれば...
昨年6度目の表彰台を獲得した総合5位アウグスト・フェルナンデェス(24歳)は、レギュラー参戦1年目の3年前に3勝を挙げた実績があり、プレミアクラスからの打診を受けたが、中量級のトップチームであるマーク・VSD・レーシング・チームからの移籍を決断し『KTM GP Academy』に加入。
昨年5度目の表彰台を獲得した総合6位アロン・カネト(22歳)は、ジョアン・ミル、ホルヘ・マルティン、エネア・バスティアニーニ、ファビオ・ディ・ジャンアントニオ、マルコ・ベツェッキら同世代のライバルたちに遅れを取ったが、次々にプレミアクラスにライダーたちを輩出したポンス・レーシングに移籍し、カレックス機に乗り換える。
イデミツ・アジア・タレント・カップから順調に昇格してきた総合8位小椋藍(21歳)は、中量級2年目に2年前の軽量級2年目を再現させるように一貫したパフォーマンスで上位に進出し、序盤に追求する初優勝を挙げ、サマーブレイク前までにタイトル獲得を狙える射程圏内に位置すれば、初のアジア・タレント・カップ出身者として、プレミアクラスに昇格する可能性が高まるだろう。
74年目を迎えるチャンピオンシップは、3月4日から6日にルサイル・インターナショナル・サーキットで開幕。オフィシャルウェブでは、史上最多となる全21戦を完全網羅の生中継で配信し、注目のライダーの動向を随時伝える。