第13戦オーストリアGP~新たなトラック戦略

ポイントリーダーのクアルタラロにドゥカティ勢、アプリリア勢、KTM勢が挑戦

第13戦オーストリアGPは今週末、レッドブルリンク-シュピルベルグで8月19日(金)に初日、20日(土)に公式予選、21日(日)に決勝レースを開催。現地時間14時00分、日本時間21時00分に決勝レースがスタートする。

レイアウト変更
安全性を高め、特にプレミアクラスの最高速度を低下させることを目的に、新しいレイアウトのオプションを追加。地形を考慮した『クイック・ダブル・アペックス・シケイン』となる20度の90度ターンを設置するために、昨年11月から3月までトラックの改修工事を実施すると、当地をテストサーキットに指名しているKTMのテストライダー、ダニ・ペドロサとミカ・カリオがプライベートテストを実施して新たなレイアウトを体験。レイアウトが新しくなったことから、全ての記録が新たに書き換えられることになるが、1ラップが6秒ほど遅くなると予測されている。

Red Bull Ring Schikane

3年連続の地元優勝となるか?
昨年バイクを交換せず、スリックタイヤで走り続けることを決断して優勝を挙げた総合7位ブラッド・ビンダーと一昨年に逆転優勝を果たした総合10位ミゲール・オリベイラは、収集されたデータを参考に素早く新しいレイアウトに適応し、ファクトリーとして地元3年連続優勝を目論み、2人の新人、総合23位レミー・ガードナーと総合24位ラウール・フェルナンデェスはポイント圏内の進出を目指す。

新たなレイアウトがアドバンテージとなるか?
開催日程にオーストリアGPが復帰した2016年からヤマハの最高位は3位。過去に2度の表彰台を獲得したポイントリーダーのファビオ・クアルタラロは、ここ2戦で追い上げて来たドゥカティ勢、特に2連勝を挙げた総合3位フランチェスコ・バグナイアをタイトル争いの最大のライバルとして警戒するが、もしかしたら、新しいレイアウトがアドバンテージとなるかもしれない。

注目は総合19位フランコ・モルビデリ。後半戦の緒戦で今季最短のタイム差でゴール。2年前に接触転倒、1年前は負傷欠場したが、中量級時代には2016年に2位、2017年には優勝を挙げたトラックで前戦の好感触を再確認し、さらに一歩踏み出したいところ。

アプリリア、狙うは初のダブルポディウム
総合2位アレイシ・エスパルガロは、前戦フリー走行4での転倒が原因で右足のかかと骨折が判明。7日間の安静と診断され、自宅で治療に専念していたが、数日後にはトレーニングを再開。

カタルーニャで7位、オフィシャルテストで77ラップを周回して7番手だった後、ザクセンリンクで4番手を走行、アッセンで3位、シルバーストンで2位を獲得して総合9位に浮上したマーベリック・ビニャーレスは、1年前(スティリアGP終了後)にヤマハ発動機との契約を双方合意により即時終了したレッドブルリンクで、アプリリア加入18戦目での優勝、『MotoGP™クラス』で初の3メーカー優勝、チャンピオンシップのプレミアクラスでマイク・ヘイルウッド(ノートン/MVアグスタ/ホンダ)、ランディ・マモラ(スズキ/ホンダ/ヤマハ)、エディ・ローソン(ホンダ/ヤマハ/カジバ)、ロリス・カピロッシ(ヤマハ/ホンダ/ドゥカティ)に次ぐ史上5人目となる優勝に挑戦する。

キャリア初の3連勝となるか?
第6戦スペインGP以降、優勝、転倒、優勝、転倒、転倒、優勝、優勝の総合3位フランチェスコ・バグナイアは、残り8戦、200ポイントのタイトル争いにおいて、逆転が可能な49ポイント差まで挽回。昨年優勝を挙げたアラゴン、ミサノ、バレンシア、中量級のタイトルを獲得した2018年に優勝を挙げたタイ、日本が控えているだけに、ドゥカティが2016年から毎年優勝を挙げているトラック、4年前にタイトル争いのライバル、ミゲール・オリベイラを最終ラップで逆転し、ポイントリーダーに返り咲いた思い出のサーキットでキャリア初となる3勝を狙う。

総合4位エネア・バスティアニーニ、総合5位ジャック・ミラー、総合6位ヨハン・ザルコ、総合11位ホルヘ・マルティン、そして、軽量級と中量級に参戦した2018年と2020年、2021年に優勝を挙げた総合13位に浮上したマルコ・ベツェッキが毎年優勝を挙げて来たサーキットで優勝、表彰台を追求する。

2年ぶり5度目のダブルポディウムを狙う
前戦で優勝争いを展開した総合8位アレックス・リンスと当地で2年連続2位を獲得した総合12位ジョアン・ミルは、高い操縦性を活かして、新たな設置されたシケインを攻略し、第4戦アメリカズGP以来となるトップ4、2020年11月の第13戦ヨーロッパGP以来となるダブルポディウムを目指す。

予選のパフォーマンス向上を目指す
3戦連続してトップ0入りを逃したホンダ勢は、開催日程に復帰した2016年以降、まだ優勝がなく、2位が最高位のレッドブルリンクで反撃の狼煙を上げたいところだが、困難な戦いが予想され、決勝レースでより厳しい状況に追い込まれないようにするために、予選のパフォーマンスを向上させたいところ。

ライダー市場
KTMとテック3・KTM・ファクトリー・レーシングは、週末に2枠のうち1人目を発表予定。2人目は若手を起用する方針で調整中。

ドゥカティとプリマ・プラマック・レーシングは、ヨハン・ザルコの継続起用を発表する予定。ファクトリーチームは、8月下旬に最終的な決断を下すことから、今週末のエネア・バスティアニーニとホルヘ・マルティンに注目が集まる。

ムーニー・VR46・レーシング・チームは、周知の事実であるルカ・マリーニとマルコ・ベツェッキの継続起用をホームレースとなる次戦のサンマリノ&リビエラ・ディ・リミニGPの際に発表するかもしれない。同じことがアプリリアのサテライトチームとして来季から活動するRNFチームにも言えるかもしれない。

プレスカンファレンス
開催前日の木曜17時00分、日本時間24時00分にプレスカンファレンスルームで開催される共同記者会見にファビオ・クアルタラロ、アレイシ・エスパルガロ、フランチェスコ・バグナイア、マーベリック・ビニャーレス、ブラッド・ビンダーが出席。

ドライコンディション
金曜は降水確率が高く、土曜も小雨が降る可能性があるが、日曜にはドライコンディションが予報されている。決勝レース日の最高気温は24度。

過去のリザルト
2021年(スティリアGP)
優勝: ホルヘ・マルティン(ドゥカティ)
2位: ジョアン・ミル(スズキ)
3位: ファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)
2021年(オーストリアGP)
優勝: ブラッド・ビンダー(KTM)
2位: フランチェスコ・バグナイア(ドゥカティ)
3位: ホルヘ・マルティン(ドゥカティ)
2020年(オーストリアGP)
優勝: アンドレア・ドビツィオーソ(ドゥカティ)
2位: ジョアン・ミル(スズキ)
3位: ジャック・ミラー(ドゥカティ)
2020年(スティリアGP)
優勝: ミゲール・オリベイラ(KTM)
2位: ジャック・ミラー(ドゥカティ)
3位: ポル・エスパルガロ(KTM)
2019年
優勝: アンドレア・ドビツィオーソ(ドゥカティ)
2位: マルク・マルケス(ホンダ)
3位: ファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)
2018年
優勝: ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)
2位: マルク・マルケス(ホンダ)
3位: アンドレア・ドビツィオーソ(ドゥカティ)
2017年
優勝: アンドレア・ドビツィオーソ(ドゥカティ)
2位: マルク・マルケス(ホンダ)
3位: ダニ・ペドロサ(ホンダ)
2016年
優勝: アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)
2位: アンドレア・ドビツィオーソ(ドゥカティ)
3位: ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)

『Moto2™クラス』~アウグスト・フェルナンデェス対小椋藍
前戦でトニー・エリアス(2010年)、マルク・マルケス(2011年/2012年)、ティト・ラバット(2014年)、ヨハン・ザルコ(2015年)、フランコ・モルビデリ(2017年)、ミゲール・オリベイラ(2017年)、ブラッド・ビンダー(2019年)、アレックス・マルケス(2019年)、サム・ロウズ(2020年)、レミー・ガードナー(2021年)、ラウール・フェルナンデェス(2021年)に続く12人目の3連勝を達成したアウグスト・フェルナンデェスは、キャリアで初めてポイントリーダーに飛び出し、昨年の2連戦で連続3位を獲得したレッドブルリンクで優勝を挙げれば、2010年のトニー・エリアス以来2人目、中量級では16人目の快挙となる。

勢いに乗るアウグスト・フェルナンデェスを止めにかかるのは、13ポイント差の総合2位に再浮上した小椋藍。軽量級に参戦した2020年の2戦目(スティリアGP)に3位表彰台、中量級1年目の2021年の2戦目(オーストリアGP)に初表彰台を獲得した経験があり、今季2勝目を挙げれば、当地で日本人初の優勝。

総合1位から3位に後退したチェレスティーノ・ヴィエッティは、軽量級時代に優勝経験があり、総合4位アロン・カネトは昨年表彰台を獲得。

ペルタミナ・マンダリカ・スポット・アンド・ゴー・チームは、右肩の治療に専念するガブリエル・ロドリゴの代替として、最終戦バレンシアGPまで羽田太河を起用。エルフ・マーク・VDS・レーシング・チームは、左肩を脱臼、骨折したサム・ロウズの代役にセナ・アギウスを指名。アメリカン・レーシングは、デビュー戦で21位だったロイ・スキナーを再びワイルドカードとして招集する。

過去のリザルト
2021年(スティリアGP)
優勝: マルコ・ベツェッキ(カレックス)
2位: アロン・カネト(ブスコスクロ)
3位: アウグスト・フェルナンデェス(カレックス)
2021年(オーストリアGP)
優勝: ラウール・フェルナンデェス(カレックス)
2位: 小椋藍(カレックス)
3位: アウグスト・フェルナンデェス(カレックス)
2020年(オーストリアGP)
優勝: ホルヘ・マルティン(カレックス)
2位: マルセル・シュロッター(カレックス)
3位: ルカ・マリーニ(カレックス)
2020年(スティリアGP)
優勝: マルコ・ベツェッキ(カレックス)
2位: ホルヘ・マルティン(カレックス)
3位: レミー・ガードナー(カレックス)
2019年
優勝: ブラッド・ビンダー(KTM)
2位: アレックス・マルケス(カレックス)
3位: ホルヘ・ナバーロ(スピードアップ)

『Moto3™クラス』~フォッジャがアスパルの両雄に挑戦
前半戦11戦で4度の0ポイントが影響して、67ポイント差に引き離されていた総合3位デニス・フォッジャが大接戦となった前戦で今季2勝を挙げ、総合1位セルジオ・ガルシアと総合2位イサン・グエバラが他車との接触が原因で転倒リタイアしたことから、42ポイント差まで挽回。

再びタイトル争いに加わる可能性を掴めば、ジャウメ・マシアとデニス・オンジュも表彰台を獲得して総合4位と5位に浮上。残り8戦に向けて、好発進を決めた。

安定して上位争いを繰り広げ、シルバーストンでも優勝争いを展開していた佐々木歩夢鈴木竜生は、接触転倒が原因でリタイアを強いられたが、後方から追い上げて4位を獲得した鳥羽海渡、2戦連続8位の山中琉星と共に1993年の辻村猛以来となる日本人ライダー2人目の優勝を狙い、12戦目で初めて公式予選2への進出を果たした古里太陽は、『レッドブル・ルーキーズ・カップ』の参戦経験を活かして、初のポイント圏内進出を目指す。

過去のリザルト
2021年(スティリアGP)
優勝: ペドロ・アコスタ(KTM)
2位: セルジオ・ガルシア(ガスガス)
3位: ロマーノ・フェナティ(ハスクバーナ)
2021年(オーストリアGP)
優勝: セルジオ・ガルシア(ガスガス)
2位: デニス・オンジュ(KTM)
3位: デニス・フォッジャ(ホンダ)
2020年(オーストリアGP)
優勝: アルベルト・アレナス(KTM)
2位: ジャウメ・マシア(KTM)
3位: ジョン・マックフィー(ホンダ)
2020年(スティリアGP)
優勝: チェレスティーノ・ヴィエッティ(KTM)
2位: トニー・アルボリーノ(ホンダ)
3位: 小椋藍(ホンダ)
2019年
優勝: ロマーノ・フェナティ(ホンダ)
2位: トニー・アルボリーノ(ホンダ)
3位: ジョン・マックフィー(ホンダ)

ライブ中継配信
オフィシャルウェブでは、開催前日のプレスカンファレンスから3クラスの決勝レースまで完全網羅の生中継配信。各セッション後には、いつでも、どこでも、観たいときの視聴が可能な見逃し配信のオンデマンドを提供。

 

最先端の多視点観戦、マルチスクリーンを提供する『VideoPass(ビデオパス)』では、第13戦オーストリアGPから最終戦バレンシアGPまでの全セッション、全レースを完全網羅の生中継で配信。時差で生中継を見逃しても、オンデマンドを利用すれば、いつでも、どこでも、観たいときの視聴が可能