プレミアクラスは、チャンピオンシップ77年目のシーズンとなる来季も11チームが参戦。各チームは2人のレギュラーライダーを起用することから、22のシートが準備され、6月13日の時点で11人の起用が発表された。
ここまでのライダー市場で最も注目を集めたのは、ドゥカティのファクトリーチーム、ドゥカティ・レーシング・チームの2人目。昨シーズン最終戦までタイトル争いを繰り広げた現在総合1位のホルヘ・マルティン、昨シーズンからファクトリーチームに所属するエネア・バスティアニーニ、ドゥカティ機1年目ながら素早い順応力を発揮したマルク・マルケスが候補に挙げられたが、第7戦イタリアGP決勝レース後、ドゥカティはシーズン開幕前に契約を更新したフランチェスコ・バグナイアのチームメイトを苦渋の判断の末に選出。
元王者マルク・マルケスを選択し、現王者フランチェスコ・バグナイアとチームを結成することを決断したことから、ホルヘ・マルティンは今季末でフルエントリーライダーから引退するアレイシ・エスパルガロの後任という形で、アプリリアに移籍することを即決。切望していたドゥカティのファクトリーチーム入りを失ったが、以前から希望していたファクトリーチームが叶い、アプリリア・レーシングから参戦することが決まれば、エネア・バスティアニーニはKTMに移籍することを決意。
さらに、アプリリアが継続起用を望んでいたマーベリック・ビニャーレスが新たな挑戦に臨むことを願ったことから、KTMは『レッドブル・オレンジ・カルテット』を結成。レッドブル・KTM・ファクトリー・レーシングは、2023年8月に契約を更新したブラッド・ビンダーと今年6月に契約を延長したペドロ・アコスタ、レッドブル・ガスガス・テック3からチーム名が変更するレッドブル・KTM・テック3はエネア・バスティアニーニとマーベリック・ビニャーレスを起用することになり、5メーカーの中でどこよりも早く、来季のラインナップが決定した。
APRILIA
最高経営責任者マッシモ・リボラはホルヘ・マルティンと契約を締結した際に、マーベリック・ビニャーレスを来季起用する第一候補に挙げた一方で、以前からイタリア人ライダーの起用を願望。
現時点で今季末に契約が終了し、来季の去就が決まっていないイタリア人は、フランコ・モルビデリ、マルコ・ベツェッキ、ファビオ・ディ・ジャンアントニオの3人。
2022年5月にアプリリアとの間で2年延長のオプションを含む2023年からの2年契約を締結したRNFチームを受け継いだ参戦1年目のサテライトチーム、トラックハウス・レーシングは、チームプリンシパルのダビデ・ブリビオが第7戦イタリアGPの際に今季起用するミゲール・オリベイラとラウール・フェルナンデェスと最初に交渉することを宣言。
チームのオーナーがアメリカ人であることから、アメリカ人ライダーを起用する可能性が取り沙汰されているが、「アメリカ人ライダーを起用することは良いですが、それは適した時期が来たときでなければいけません。アメリカ人を起用することは嬉しいことですが、チームの計画が何か、何を達成したいのか、野心は何かを確認する必要があり、全てが整ったときに、起用することは嬉しいこと」と肯定的とも否定的とも捉えることができる発言をすれば、マッシモ・リボラはアプリリア主催の恒例イベント『Aprilia All Stars(アプリリア・オール・スターズ)』の際に「市場は非常に優れたライダーを提供する」と発言。これは、ジョー・ロバーツに限らず、中量級に参戦するイタリア人ライダーが選択肢に入る可能性が低いことを匂わせていた。
現段階で、参戦枠22人の内、アレイシ・エスパルガロがフルエントリーから離脱し、中量級から1人の昇格が決まっていることから、もしジョー・ロバーツ、もしくはトニー・アルボリーノ、チェレスティーノ・ヴィエッティが昇格する場合、来季の去就が決まっていない11人の中から1人がシートを失うことになる。
DUCATI
現時点で中量級からの昇格が確定しているのは1人。ドゥカティ・コルセはフェルミン・アルデグエとの間でプレシーズン中に2年延長のオプションが加えられた2025年からの2年契約を締結し、開幕戦後に正式発表。サテライトチームに貸し出されることが内定しているが、所属先は現時点で未定。
2005年からドゥカティのサテライトチームとして活動するプリマ・プラマック・レーシングは、2021年5月に2024年末まで契約期間を延長することで合意。契約の条項には、2025年以降もコラボを継続するオプションが含まれているが、サテライトチームの起用を切望するヤマハ発動機と交渉。2023年に史上初となるチーム部門とインディペンデントチーム部門をダブル制覇したチームのチームマネージャー、ジノ・ボルソイは来季もドゥカティ機を使用する予定だと国際中継のインタビューに応えたが、ドゥカティ・コルセのジェネラルマネージャー、ジジ・ダリーニャは、マルク・マルケスの起用を発表した際に「リスクは決定的に現実であり、我々にとってそれは残念なことになるだろう。プラマック・レーシングとパオロ・カンピノティとは長い間一緒に活動をしており、我々の成功の一部でもある。全てを評価する必要があるが、実際のところ、問題は存在する」と不安を隠さなかった。
もし、契約を延長すれば、ドゥカティ・コルセと直接契約を結ぶフェルミン・アルデグエがレンタルされ、チーム内で評価が高いフランコ・モルビデリを継続起用する可能性がある。
ドゥカティ・コルセとの間で今季末まで契約があるのは、プルタミナ・エンデューロ・VR46。来季使用するバイクを探すために、シーズンが始まる前から本命であるドゥカティとヤマハ発動機と交渉していることを認めたチームマネージャーのパブロ・ニエトは、スペインで生中継を配信する『DAZN』のインタビューに応えた際に「調印を交わしていないが、合意間近」と発言。ドゥカティとの間で契約更新が近いことを示唆していた。
基本的には、チームオーナーのバレンティーノ・ロッシが運営する『VR46 Riders Academy』に所属するライダーを起用するが、昨シーズン末にルカ・マリーニが離脱したことから、急きょ、メンバー外であるファビオ・ディ・ジャンアントニオを起用。今季プリマ・プラマック・レーシングからファクトリーマシンを使用する可能がありながら、残留を決断したマルコ・ベツェッキが引き続きチームに残るのか、他のチームに移籍するのか注目が集まる。
一方で、昨年8月に2024年からの2年契約を締結したグレシーニ・レーシングは、マルク・マルケスの後任を探すと同時に、昨年から起用する2年目のアレックス・マルケスを継続起用するかどうか決断が迫られる。
YAMAHA
今年5月に2020年からファクトリーチームで起用するファビオ・クアルタラロとの間で契約を更新。成績面だけでなく、開発面においても重要な存在となり、その意味では、プレミアクラスである程度の経験があるライダーをファクトリーチームの2人目に指名する可能性が高く、サテライトチームの起用と共に高い関心が集まる。
HONDA
レプソル・ホンダ・チームはルカ・マリーニを2025年末まで起用する契約を締結。ジョアン・ミルとは2024年末で契約が終了することから、契約を延長するか、新たなライダーを探すのかが課題。
一方で、カストロール・ホンダ・LCRは来季も引き続き、ヨハン・ザルコを起用。HRCとイデミツ・ホンダ・LCRが中上貴晶と契約を延長するのかどうかにも関心が寄せられる。
6月30日
第6戦カタルーニャGPと第7戦イタリアGPの2連戦で大きく動き、トップ8に進出するライダーたちの去就が決定したライダー市場において、メーカー及びチームがライダーと結ぶ多くの契約には、6月30日までに契約延長の意思を伝える条文が含まれていることから、サマーブレイク前の第8戦TTアッセンと第9戦ドイツGPの2連戦で、さらに市場が活発に動くことが予想される。