チャンピオンシップ77年目のオープニングは、まさに地球上で最もエキサイティングなスポーツに相応しいショーが展開され、元王者マルク・マルケスが新天地ドゥカティ・レノボ・チームからのデビュー戦でポールポジションからティソ・スプリントと決勝レースでダブルウィンを成し遂げたことから、11年ぶりにポイントリーダーとしてシーズンをスタート。
ドラマが保証される特別な舞台
世界中のファンがソーシャルメディアで称賛するドリームチームからドリームスタートを切ったマルク・マルケスは、1999年以来15年ぶりにアルゼンチンに戻って来た2014年にポールポジションから優勝、2015年優勝争い中に接触転倒、2016年7.6秒差の優勝、2017年トップ走行中に転倒、2018年2つのペナルティが科せられて18位、2019年9.8秒差の優勝。2022年と2023年は負傷欠場を強いられた右回りのサーキット、アウトドロモ・テルマス・デ・リオ・オンドに6年ぶりに戻る。
ドリームスタート
2番グリッドから連続2位を獲得したアレックス・マルケスは、プレシーズンのパフォーマンスとリザルトを再現させ、史上初となるワンツーフィニッシュを達成。マルケス兄弟にとって、正にドリームスタートとなり、最後に当地を訪れた2023年にプレミアクラスで初のポールポジションから5位と3位を獲得したことから兄弟対決が繰り広げられるか注目が集まる。
3番グリッドから連続3位を獲得したフランチェスコ・バグナイアは軽量級、中量級時代を含めて、当地での表彰台獲得の経験がなく、最高位は2022年の5位。2年前は3番グリッドから6位と16位(2番手走行中に転倒)だったトラックで、特に課題に挙げている初日にどのようなスタートが切れるかが週末の鍵となる。
トップ3のパフォーマンスとリザルトに注目が集まった週末に、きっちりと結果を挙げたのは、2年連続して2024年型のチャンピオンマシンを駆けるフランコ・モルビデリ。虎視眈々とトップ3入りを狙い、左肩の手術と左鎖骨の骨折が原因で周回を重ねることができなかったファビオ・ディ・ジャンアントニオは、熱さが原因でティソ・スプリントをリタイアしたが、決勝レースは走り切って10位。週末を通じて、消化できなかったプレシーズンのテストプログラムに取り組みながら、同僚たちのデータを参考に調整を続けて行く。
無名の英雄
中量級王者ながら、プレミアクラスの上位陣と比較すると、まだ世界的な知名度は高くなかったが、驚嘆的なパフォーマンスを披露し、衝撃的なリザルトを獲得し、感銘的なデビュー戦を飾り、新人としては2013年のマルク・マルケスに次ぐリザルトを獲得した小椋藍の認知度と人気は急上昇。
2023年はトレーニングアクシデントが原因で負傷欠場を強いられたが、2022年は中量級で初表彰台を獲得したトラックでどのような走りを見せてくれるのか、一挙手一投足に注目。
ハンティング
ドゥカティは公式予選で5戦連続のポールポジション、82戦連続の1列目、ティソ・スプリントで15戦連続の優勝、決勝レースで18戦連続の優勝、67戦連続の表彰台。2023年にアウトドロモ・テルマス・デ・リオ・オンドで初優勝を挙げれば、アプリリアは2022年にプレミアクラスで初優勝を達成。
ドゥカティに唯一の優勝をもたらしたマルコ・ベツェッキは、アプリリアからのデビュー戦でプラクティスと公式予選2の転倒、ティソ・スプリントのスタートが影響したが、軽量級参戦2年目の2018年にキャリア初優勝、プレミアクラス1年目の2022年に初ポイントとなる9位、2023年に2番グリッドからプレミアクラス初優勝を挙げた南米のサーキットで新天地からの初表彰台、初優勝を目指し、テストライダーのロレンソォ・サバドーリはホルヘ・マルティンの負傷代役を継続する。
仕切り直し
参戦9年目のKTMは、ティソ・スプリントと決勝レースの最高位が6位と8位。ここ数年と比較すれば、比較的静かなシーズンスタートとなったが、2年前のティソ・スプリントではブラッド・ビンダーが15番グリッドから初優勝。決勝レースの最高位は2022年と2023年の6位に進出したトラックで、ブラッド・ビンダーとペドロ・アコスタが中心に上位進出を目指すが、ドゥカティ機からKTM機への乗り換えに苦労し、ティソ・スプリントで23差の18位だったが、レース中盤以降の強さを発揮して、20番グリッドから20秒差の9位まで挽回したエネア・バスティアニーニの走りにも視線が集まる。
回復の兆し
プレシーズンのオフィシャルテストで着実に戦闘力の向上を示したホンダとヤマハは、他のメーカー同様に、開幕戦で例年以上に気温が上昇したことから、タイヤマネジメントと熱さ対策に苦しんだが、昨年10月に当地で開催された週末を上回るパフォーマンスを披露。
特にホンダは、ヨハン・ザルコが昨年のベストリザルトを更新する7位に進出。ルカ・マリーニはベストリザルトタイの12位。ジョアン・ミルは転倒を喫したが、ベストパフォーマンスと評価。
ヤマハからのデビューレースで中盤まで6番手を走行していたジャック・ミラーとヤマハ機の適応に時間を費やしていたミゲール・オリベイラは、ポイント圏内の11位と14位に進出。ファビオ・クアルタラロとアレックス・リンスは15位と17位。
トップスピードがペトロナス・セパン・インターナショナル・サーキットやチャーン・インターナショナル・サーキットよりも速く、時速345キロメートルを超え、9つの右コーナー、5つの左コーナーを組み合わせたレイアウトを構えるトラックで日本メーカーが欧州メーカーにどのくらい接近、そして対抗するのか興味深い。
気象状況
2年前の決勝レースは、雨が降ったウェットコンディションだったが、月曜日の時点で、週末の天気予報は晴れ。ドライコンディションとなり、金曜日と土曜日の最高気温は28度、最低気温は21度、日曜日は最高気温が30度まで上昇する見込み。
Moto2™
フル参戦4年目に新天地から昨年10月の第16戦日本GP以来キャリア2勝目を挙げ、優勝発進を決めたマヌエル・ゴンザレスは、2年前に11位、3年前に14位だったアルゼンチンにポイントリーダーとして乗り込む。
昨年の成績とプレシーズンの結果からチャンピオン候補の筆頭に挙げられるアロン・カネトは、オフィシャルテスト最終日に左肩、開幕戦初日に右肩を転倒が原因で負傷したが、2位表彰台を獲得。2年前と3年前に4位を獲得したトラックで5ポイント差のポイントリーダーに挑戦。
参戦2年目の緒戦で好発進したのは、初表彰台を獲得したセナ・アギウスと4位に進出したディオゴ・モレイラ。新天地から6位発進を決めたバーリー・バルトゥス、デビュー戦で新人勢の最高位となる8位に進出したダニエル・オルガド、2年前に優勝を挙げたトニー・アルボリーノ、3年前に優勝を挙げたチェレスティーノ・ヴィエッティらとともに注目が集まる。
参戦2年目の佐々木歩夢と参戦1年目の國井勇輝は、シーズンの緒戦で完走。2戦目はポイント圏内の進出を目指す。
Moto3™
開幕戦で優勝を挙げたのは、参戦3戦目のホセ・アントニオ・ルエダ。2022年に史上初めて『ジュニアGP™世界選手権』と『レッドブル・ルーキーズ・カップ』を同時に制した19歳のスペイン人ライダーが2年前に13番グリッドから23位だった当地にポイントリーダーとして乗り込む。
2024年に史上3人目となる『ジュニアGP™世界選手権』と『レッドブル・ルーキーズ・カップ』を同時に制したアルバロ・カルペは、昨年11月の最終戦ソリダリティGPから数えて2戦目で、2021年に『レッドブル・ルーキーズ・カップ』王者としてデビューしたペドロ・アコスタ以来となるフルエントリーライダーのデビュー戦で2位、表彰台を獲得。鮮烈なデビューを飾れば、2023年に史上2人目となる『ジュニアGP™世界選手権』と『レッドブル・ルーキーズ・カップ』を同時に制したアンヘル・ピケラスは、ホンダ機からKTM機に乗り換えた参戦2年目の緒戦で他車から追突されて転倒した後に12位完走。
昨年の成績とプレシーズンのテスト結果から、ホセ・アントニオ・ルエダ、アンヘル・ピケラスと並び上位進出が期待されるアドリアン・フェルナンデェスは3位発進。4人のスペイン勢に対抗するのは、4位を獲得したステファノ・ネパ、ポールポジションのマッテオ・ベルテッレ、軽量級の復帰戦で6位に進出したデニス・フォッジャらイタリア勢。
日本勢は開幕戦こそ転倒を喫したが、山中琉聖と古里太陽は2年前の走行経験を活かして素早くトラックに適応し上位進出、そして、今季初の表彰台を狙う。