チャンピオンシップは、サマーブレイク直前、前半戦最後の1戦となる第12戦チェコGPをアウトモトドローム・ブルノ、通称ブルノ・サーキットで開催する。
昨年8月、チャンピオンシップの商業権を所有するドルナスポーツは、チェコ政府、南モラヴィア州、チェコ・オートクラブの支援を受けたアウトモトドローム・ブルノとの間で2025年から2029年までの開催に関して契約を締結。路面の舗装工事やサーキット内の一部の改修工事を実施したことで、国際モーターサイクリズム連盟から開催に必要なホモロゲーションを得て、地球上で最もエキサイティングなスポーツが2020年8月以来5年ぶりに催行される。
現王者復帰
2024年11月の最終戦ソリダリティGPでタイトルを獲得したホルヘ・マルティンは、チャンピオンナンバー『1』を初めてアプリリア機に貼付したプレシーズンのオフィシャルテスト1日目にハイサイドから転倒した際に右手(第5中手骨)と左足(第3、第4、第5中足骨)を骨折。開幕戦タイGPに向けて、バイクを使用したトレーニング中に左手(橈骨、舟状骨、三角骨)と左足(踵骨)を骨折。
デビュー戦となった第4戦カタールGPの決勝レースで転倒した際に胸膜肺を損傷(気胸)、右肋骨(第1から第8までの後肋骨弓を8つ、第7から第9までの外側弓を3つ)を骨折したが、7月9日にミサノ・ワールド・サーキット-マルコ・シモンチェリでプライベートテストを実施して87日ぶりにアプリリア機『RS-GP』に乗り込み、回復具合を確認。復帰に向けて開催前日にメディカルチェックを受けることになった。
数々の記録を更新し続ける旧王者
プレミアクラスで史上9人目となる200戦目で史上2位となる69勝目を挙げたマルク・マルケスは、第8戦アラゴンGPから4戦連続7度目、史上最多に並ぶ通算8度目のダブルウィンを達成したことで、ライバルたちに対してポイント差を拡大。
当地で最後に開催された2020年は負傷欠場したが、プレミアクラスに進出した1年目の2013年、2017年、2019年の優勝を含め6度目の表彰台を獲得。左6つ、右8つのコーナーを数える右回りトラックでアドバンテージの拡大に挑む。
前王者の反撃
前戦のグランプリレース終了後、表彰台に登壇する前に「次は右回りトラックだ」と左回りトラックでライバルたちを圧巻するペースで走行したマルク・マルケスに言い放った総合3位フランチェスコ・バグナイアは、総合2位アレックス・マルケスと共に今季7度目の表彰台を獲得したが、ポイント差が拡大。サマーブレイクを前にライバルの前でフィニッシュして、ギャップを少しでも詰めたいところ。
重要な1戦を迎えるアプリリア
ホルヘ・マルティンが復帰するアプリリアは、コンストラクター部門で総合2位に進出。第12戦チェコGP後にコンセッションのランクが評価され、今週末の結果次第ではランク『C』を維持できるかどうかが決定することから、総合6位マルコ・ベツェッキのリザルトに注目が集まる。
2戦連続の0ポイントに終わり、総合12位から14位に後退した小椋藍は、軽量級に参戦した2019年に6位、2020年に3位表彰台を獲得した当地で第5戦スペインGP以来今季4度目のシングルフィニッシュを狙う。
2020年の再現となるか
2020年8月9日。5年前に当地で開催された第4戦チェコGPで参戦1年目のブラッド・ビンダーが初優勝を飾り、KTMに初優勝をもたらすことに成功。総合8位ペドロ・アコスタと共に今季初表彰台を目指す。
5年前の中量級で優勝を挙げたエネア・バスティアニーニは病欠から復帰。左肩を手術したマーベリック・ビニャーレスは欠場することから、KTMのテストライダー、ポル・エスパルガロが代役として起用される。
プライベートテストのアドバンテージ
2002年以降、当地で最多9勝を誇るホンダは、7月1日から2日間プライベートテストを実施したことから新しい路面に対するデータを取得。テストに参加した総合15位ルカ・マリーニはホンダに加入してから自己最高位に進出した勢いに乗って、5年前に3位表彰台を獲得した総合7位ヨハン・ザルコ、総合19位ジョアン・ミルと共にブルノに乗り込む。
トレーニングアクシデントが原因で右膝を負傷したソムキアット・チャントラの代役として、開発ライダーの中上貴晶を招集。5年前はホンダ勢最高位の9位だった。
コンストラクター部門の総合5位に位置するヤマハは、総合18位アレックス・リンスと総合23位ミゲール・オリベイラを招集し、当地で7月1日から2日間のプライベートテストを実施。5年前はアレックス・リンスが2年連続の4位、ミゲール・オリベイラは6位、総合10位ファビオ・クアルタラロは2年連続の7位、総合16位ジャック・ミラーは9位だったが、6年前に3位表彰台を獲得。グリップレベルが高いと予想されるトラックでどのようなパフォーマンスを発揮するのか関心が高まる。
気象状況
水曜日の時点で、木曜日の夜から金曜日の昼前まで雨が予報されているが、その以降は晴れ。土曜日は気温が28度、日曜日は29度まで上昇。中量級と軽量級のオフィシャルテストが予定されている月曜日と火曜日も晴れ。
Moto2™
ポイントリーダーのマヌエル・ゴンザレスは、16番グリッドから4位まで挽回。総合2位アロン・カネトに対して、アドバンテージを9ポイント差に拡大。今週末は初めてアウトモトドローム・ブルノを訪れるが、公式予選の転倒で左手と左肩を負傷、爪を欠損した厳しいフィジカルコンディションにも関わらず、開幕戦から唯一全戦でポイントを連取するアロン・カネトはレース経験を活かして、ポイント差を詰めに行く。
総合3位ディオゴ・モレイラは、25番グリッドからトップ3を射程圏内に捉えた直後に他車との接触が原因でリタイア。安全を確認せずにトラックに戻ったことから、ピットレーンスタートのペナルティが科せられ、総合10位マルコス・ラミレスは、他車の転倒を引き起こした行為により、ダブルロングラップペナルティが科せられた。
週末の注目は、今季3度目の表彰台を獲得した総合4位ジェイク・ディクソン、今季4度目の表彰台を獲得した総合5位バーリー・バルトゥス、今季2勝目を挙げて総合6位に浮上したデニス・オンジュ、地元出身で舗装された路面を市販車で確認した総合12位フィリップ・サラッチ。
2020年に3位を獲得したジョー・ロバーツをはじめ、マルコス・ラミレス、ジェイク・ディクソン、軽量級に参戦していたアルベルト・アレナス、トニー・アルボリーノ、チェレスティーノ・ヴィエッティ、デニス・オンジュ、バーリー・バルトゥス、アロンソ・ロペス、佐々木歩夢、國井勇輝らは経験を活かしてアドバンテージを築きたいところ。
前戦ドイツGPに参戦した羽田太河はマリオ・アジの代役を継続。マッティア・パシーニと『Moto2™欧州選手権』に参戦するポーランド出身のミラン・パヴェレツがワイルドカード参戦。
Moto3™
ポイントリーダーのホセ・アントニオ・ルエダは、前戦で今季8度目の表彰台を獲得。アドバンテージを73ポイント差に拡大し、レース経験がないサーキットに臨む。
週末の注目は今季2勝目を挙げて総合5位に浮上したダビド・ムニョス、新人王争いを繰り広げる総合2位アルバロ・カルペと総合6位マキシモ・キレス、速さが際立ってきた総合8位ダビド・アルマンサ、優勝争いを繰り広げた総合7位古里太陽と総合12位山中琉聖、ポールポジションを獲得した総合16位スコット・オグデン。
当地で最後に開催された2020年に優勝を挙げたデニス・フォッジャ、10位ステファノ・ネパ、転倒リッカルド・ロッシがレース経験を活かして上位進出を目指す。