チャンピオンシップの商業権と放映権を所有する『MotoGP Sports Entertainment Group』は、2024年12月にブラジルのゴイアス州政府と『F1』サンパウロGPの継続と成功の原動力であるブラジルモータースポーツとの間で、『MotoGP™』を2026年から2030年まで、ゴイアニア・インターナショナル・レーストラック・アイルトン・セナで開催することに関して5年契約を締結。
世界で5番目の面積、7番目の人口を誇るブラジルは、南米最大の面積と人口を擁する国であり、移動手段として自動二輪車の需要増加に加え、デリバリーなどの商用ニーズの高まりを背景に、近年市場が急速に拡大。南米最大の自動二輪車市場であり、世界でも主要な生産、消費国の1つであり、2025年は年間200万台の販売が見込まれ、今後も継続的な拡大が予測されている。
市場規模や保有台数で見ると、インド、インドネシア、中国などと並び、世界有数の自動二輪車市場の1つであるブラジルで初めてチャンピオンシップが開催されたのは、1987年9月。第14戦として、首都ブラジリアから約210キロメートル南西の距離にあるゴイアス州の州都ゴイアニアのゴイアニア・インターナショナル・レーストラック・アイルトン・セナで開催。
ブラジル初開催は39年前の1987年
初開催で優勝を挙げたワイン・ガードナーは同時にタイトルを獲得。1988年はエディ・ローソン、1989年はケビン・シュワンツが優勝。
1992年8月、ブラジルで3年ぶりに開催されたのは、南米最大、南半球最大のメガシティであるサンパウロ市内のアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ。市内のグアラピランガ湖とビリングス湖の間に位置するため、湖の間を意味するインテルラゴスと呼ばれ、ウェイン・レイニーが優勝。
1995年からは、国内最大の観光都市であるリオデジャネイロ郊外のアウトドローモ・インテルナシオナル・ネルソン・ピケ、別名ジャカレパグア・サーキットで開催され、ルカ・カダローラが優勝。1996年と1997年はミック・ドゥーハン、1999年は阿部典史、2000年から2003年までバレンティーノ・ロッシ、そして最後に開催された2004年は玉田誠が優勝。
バレンティーノ・ロッシは軽量級と中量級に参戦した1997年と1999年にも優勝を挙げ、通算6勝を挙げれば、『125cc』では徳留真紀(1995年)、青木治親(1996年)、上田昇(1999年)、宇井陽一(2001年)、東雅雄(2002年)、『250cc』では加藤大治郎(2000年/2001年)がトップでチェッカーフラッグを受けていた。
セッション時間拡大
1989年以来37年ぶりの開催に向けて改修工事が実施されたトラックの全長は3835メートル。ザクセンリンクの3671メートルよりも長いが、周回数は1ラップ多く、開催日程最多の31ラップ。時計回りのレイアウトは14コーナー(右9/左5)と994メートルのストレートで構成され、初日は37年ぶりの開催を考慮して、フリープラクティス1は45分間から60分間、プラクティスは60分間から75分間に拡大。
KTM&ペドロ・アコスタ
世界で最もエキサイティングなスポーツに相応しい開幕戦タイGPとなったティソ・スプリントで初優勝を挙げ、グランプリレースで2位を獲得したペドロ・アコスタはプレミアクラス3年目で初めて、KTMのライダーとして史上初めてワールドスタンディングのトップに躍り出た。
今シーズンの注目の1つである、ペドロ・アコスタの初優勝に期待が高まる一方で、ブラッド・ビンダーは昨シーズン中盤から1桁台を維持。開幕戦で期待していた結果を残せなかったエネア・バスティアニーニ、マーベリック・ビニャーレスと共にファクトリー内での競争が高まりそうだ。
初戦を圧巻したアプリリア
オフィシャルテストからチャーン・インターナショナル・サーキットで圧倒的な速さを見せ、ライバルたちから別次元と称賛されたマルコ・ベッツェッキはティソ・スプリントこそ転倒リタイアを喫したが、グランプリレースで自身初、そしてアプリリア史上初めて3連勝を達成。7ポイントでポイントリーダーを追いかけると、連続3位を獲得したラウール・フェルナンデェスが総合3位、ホルヘ・マルティンが総合4位、小椋藍が総合5位に進出。
アプリリア機『RS-GP26』を駆ける4人が揃ってティソ・スプリントとグランプリレース、そしてワールドスタンディングで史上初めてトップ5に進出。開幕戦で高い競争力と総合力を披露したアプリリアが未知の舞台でどのようなパフォーマンスを見せるのか大きな注目が集まる。
チャンピオンの逆襲
昨シーズン、トリプルクラウンを達成したドゥカティは、1年前に圧倒的な強さを見せたタイで、2021年9月の第13戦アラゴンGPから続いていた表彰台獲得記録が88戦で途切れ、2020年11月の第14戦バレンシアGPから続いていたトップ5入りも逃し、KTM、アプリリアの後塵に拝したが、走行データがないトラックに対して、6台体制の総合力を存分に発揮したいところ。
開幕戦で不運なトラブルに見舞われたマルク・マルケスは、帰国して直ぐにトレーニングを再開。ホルヘ・マルティンと共にフィジカルコンディションの回復、強化に努める時間があれば、1月に左脚の大腿骨を骨折したフェルミン・アルデグエルが医師の許可を得て、66日ぶりに市販車を試乗。メディカルチェックで出走の許可が下れば、昨年11月のオフィシャルテスト以来122日ぶりにドゥカティ機に乗り込み、シーズンをスタートさせる。
群を抜く適応力
注目が高まるのは、マルク・マルケスの適応力。如何なるトラックコンディションに対しても、未経験のトラックに対しても、素早く適応する能力の高さは、ずば抜けていて、チャンピオンシップ初開催となった2013年のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ、2014年のテルマス・デ・リオ・オンド、2018年のチャーン・インターナショナル・サーキット、2025年のバラトンパーク、そしては5年ぶりに開催日程に復帰したアウトモトドローム・ブルノで優勝を挙げた実績がある。2023年のブッダ・インターナショナル・サーキットではマルコ・ベッツェッキが優勝を挙げていた。
ホームグランプリ
ブラジル系イタリア人のフランコ・モルビデリにとっては第2のホームグランプリ。ブラジル出身の母親の影響を受け、ライフスタイルはブラジル色が強く、サンパウロ出身のディオゴ・モレイラは中量級王者として母国ブラジルに凱旋。そして、1990年から2007年まで参戦したアレックス・バロス以来19年ぶりのブラジル人ライダーとして、ファンの前に登場する。
期待高まるホンダ勢
ブラジルのバイク市場を圧巻するホンダは、1月のオフィシャルテストから戦闘力が高まり、ドゥカティ、アプリリア、KTMに接近していることを証明。初戦のグランプリレースではリタイアを強いられたジョアン・ミルを筆頭にルカ・マリーニ、ヨハン・ザルコ、ディオゴ・モレイラがどのようなパフォーマンスを発揮し、トップ5を目指すリザルトを獲得できるかどうか関心が高い。
来年を視野に実戦での学習に専念
『V4』プロジェクトの困難な門出となったヤマハ勢だが、技術規則が大幅に改定される2027年を視野に入れ、後半戦からの戦闘力向上を目指していることから、今週末も貴重なデータとフィードバックを収集し、走行距離を積み重ねる機会となるが、誰もがトラック攻略にある程度の時間を費やすことから、特にトプラク・ラズガトリオグルがどのような適応力と順応力を見せるのか注目に値する。
Moto2™
2度の赤旗により、周回数が22ラップから7ラップに縮小された中、マヌエル・ゴンザレスが昨年6月の第9戦イタリアGP以来となる優勝を挙げ、イサン・グエバラが2位、参戦2年目のダニエル・オルガド、イバン・オルトラ、コリン・ベイヤーが続き、シーズンを引っ張りそうなポテンシャルの高い5人が揃ってトップ5入り。
プラクティスで転倒して右足の2ヶ所を骨折したアドリアン・ウエルタス、決勝レースで転倒した際に全身を強打、特に左足、右脚、右肩を打撲したダビド・アロンソと左手の人差し指を負傷したセルジオ・ガルシアは参戦の見込みだが、ルカ・ルネッタは右脚の脛骨と腓骨の果部、くるぶしを骨折して手術を受けたことから欠場。スピードRS・チームは2024年から2年間中量級に参戦経験があり、欧州選手権に参戦するジュニアチームで起用するデニス・フォッジャを代替として2連戦に起用する。
Moto3™
新天地に移籍して、ホンダ機からKTM機に乗り換えたダビド・アルマンサが46戦目で初優勝を挙げ、初めてポイントリーダーに飛び出せば、参戦2年目のマキシモ・キレス、バレンティン・ペローネ、アルバロ・カルペがトップ4入り。6位だったアドリアン・フェルナンデェスらがシーズンの主役になりそうな初戦だったが、初めて訪れるトラックでグループ争いとなるか、誰かが飛び出すのか興味深い。
昨年10月の第18戦インドネシアGPで左脚の大腿骨を骨折して計4度の手術を受けたダビド・ムニョスは10位で完走したが、十分に回復していないことから欠場。代役は起用されない。