レッドブル・KTM・テック3は、レッドブル・KTM・ファクトリー・レーシングと共同で2026年型『RC16』を発表。所属2年目のマーベリック・ビニャーレスは、第11戦ドイツGPで左肩を脱臼骨折したことで8戦に欠場し総合18位に低迷した1年目を振り返り、新たな挑戦を迎えるにあたり、昨年11月下旬にホルヘ・ロレンソをパフォーマンスコーチとして迎え入れ、2年目に臨む意気込みを語った。
KTM1年目
「昨シーズンを2つに分ける。最初はKTMを発見し、経験を積み、良い結果を収め、ファクトリーを牽引した時期。ところが、残念なことにザクセンリンクで大きなハイサイドを喫してしまい、肩を脱臼した。そこから2つ目の時期が始まり、回復期間は、できるだけ早く復帰したいという思いが強かったけど、それは非常に厳しいものだった。」
「この経験を通して、自分が正しいことをしているのか、何を改善できるのかを考えるようになった。そのおかげで、別の手段で準備し、挑戦に備えることができた。精神的にも強くなった。KTMでの最高の瞬間から、おそらくキャリアで最悪の瞬間へと転落するのは辛いものだったけど、そこから立ち直り、非常に強くなったと感じている。」
左肩の回復具合
「体重が61キロまで減少した。痩せてしまったから、体調を回復するために一生懸命に取り組んできた。今は65~67キロ。身体的に強くなったと感じる。怪我をしたときよりも、強さがあるかを確認する必要があったけど、昨年よりも強さがある。バイクに乗った時に痛みがないかどうかが鍵。トレーニングに使用しているバイクなら大丈夫。テニスやバレーボールは無理だけど、セパンまでには完全に健康な状態になるだろう。」
「これまで以上に調子が良い。唯一の懸案は、週末に肩の痛みがでるかどうかだけど、大丈夫だろう。初日から全く問題ないはず。トレーニングに集中したこともあり、この冬は非常に短く感じた。」
プレシーズン
「この冬は、特にライディングスタイルなど、技術的な細部に重点を置き、これまでとは全く異なる手段で、自分の才能と可能性を発見することに注力してきた。まだ改善の余地があることが本当に嬉しい。嬉しいことだけど、18歳の時に気づいていたら、もっと良かった。おそらく、もっと優れたライダーになっていただろう。いずれにせよ、遅すぎるということはない。今は楽しんでいるし、テストでは最高のパフォーマンスを発揮し、適切なフィードバックを与えたい。 目標は初戦に向けて全力を尽くすこと。」
ホルヘ・ロレンソとのパートナーシップ
「彼をテクニカルコーチとして迎え入れたことで、シーズンへのアプローチが一変した。期待しているのは、テクニカルスキルの向上。ライディングスタイルを変えるのは、自然に身についていることなので難しい。スキルを向上させるのは大変。加速やブレーキのかけ方など、様々な要素が関連するから。彼のレース経験は僕にとって大きな鍵となる。」
「これまでとは全く違うトレーニングに取り組んでいる。何か成果を上げたいなら、何か違うことをしなければいけない。この冬はそれを実現させた。慣れないコンディションも含めて、多くのバイクに乗り、難しいコンディションで上達した。彼はただぐるぐる回るというのではなく、具体的な目標を念頭に置き、真剣に取り組んでくれた。」
「ライディングに関する、あらゆる技術的側面を磨いてきた。大きなトラックだけでなく、小さなトラックでも、スムーズでアグレッシブでありながら、非常に正確なライディングを目指している。これは僕たちのバイクにとって非常に重要。アグレッシブに走らせると同時に、正確さも求められる。これは非常に難しい組み合わせ。アグレッシブになると直ぐに精度が失われてしまうから。」
コンビを結成した経緯
「これはよくあることだった。オースティンで勝った後、自分にはできないことがあると気づき、怪我した後、今こそやるべき時だと悟った。僕たちは連絡を取り合い、最初から懸命に働いた。チームは何も妨害しなかった。彼がいることはチームにとってもプラス。彼は僕が取り入れたいスキルを有する。全戦、特に序盤戦にサーキットに来てくれることを願う。彼はきっと興奮して、全戦に来ることを望むだろう。」
2人の関係
「基本的には一緒に練習して楽しんでいる。彼はあらゆるコンディションで走らせてくれた。ある時、路面がとても濡れていたから、帰宅しようと思っていたけど、僕を走らせてくれた。怪我して以来初めてウェットコンディションだった。そうやって物事が解き放たれる。『MotoGP™』以外でも、僕に必要な激しさをもたらしてくれるだろう。以前も関係は良かったけど、昔のホルヘとは違うホルヘを知って驚いた。実は最後に交わした言葉は、あまり良いものではなかった。別の期待を抱いていたけど、今の彼は人生の別の段階にあり、楽しんでいる。」
現役時代の関係
「良好な関係だったけど、軽く挨拶を交わしていた程度。ライダーたちとは友好的に声を掛ける以上の関係にはならない。」
ロレンソスタイルの習得
「鍵となるのは、彼の経験を活かして、遠回しにせず、物事を素早く進めること。ヤマハに乗った時、それは彼のバイクで、とても良い感じを得た。彼は僕のライディングを次のレベルに引き上げるための素晴らしいアイデアを持っている。コーナリングなど、彼のライディングと似ているところがあるけど、ブレーキングでは僕の方がアグレッシブ。」
低速走行の利点
「非常に複雑。技術的にゆっくり走ろうとすると、バイクの乗り方を知らないように見えてしまう。バイクの乗り方を知り、そのスキルをあらゆるタイプのバイクに適用し、『MotoGP™』で活用する必要がある。」
実戦での活用
「最も楽しみにしているのは、開幕戦で表彰台に登壇すること。今年は僕にとって重要な年だから、細心の注意を払ってきた。これまでとは違うアプローチで臨み、モチベーションも高く、それは大きなプラスとなる。これまでとは違う年。KTMをよく知り、全く違う形でスタートする。昨年はバイクを理解するのに4戦を費やした。今は微調整を重ね、戦う準備を整える必要がある。」
ペドロ・アコスタ以上の才能と評価
「ホルヘからそう言われるのは良いけど、努力のない才能は役に立たない。確かにレースに勝ったし、良い成績も沢山残してきたけど、今のところ、チャンピオンシップを制していない。あらゆる才能を持っているとしても、それを正しく使わなければ、活かすことはできない。ほんの数回しか活かせていない。これは僕が進化し、成長するために必要なこと。」
「もちろん、僕には才能がある。モトクロスでもトライアルでも、どんなバイクでも最高になれるけど、問題は、そこから上手く進化できるかどうか、毎日限界まで自分を追い込めるかどうか。ホルヘと一緒に取り組んでいるのは、まさにそれ。毎日、そして全てのレースで100%の力を発揮できるようにすること。もし22戦の週末に自分の才能を全て発揮できれば、上位争いから脱落することはまずないだろう。彼は、様々なコンディションの中で新品タイヤや中古タイヤを使ってトレーニングをするように勧めてくれた。それは僕がこれまでに怠っていたトレーニングだったけど、おかげで、より強くなったと手応えを感じている。まだ何を改善し、学ぶ必要があることが見つかるのは、僕にとって大きな発見。」
メディテーション
「瞑想するたびに、ハエが邪魔するから集中できない(笑)。瞑想はトレーニングの基本的な要素。僕はとてもエネルギッシュだけど、全てを統合するためにリラックスすることも必要だから、トレーニングに瞑想を取り入れた。重要な要素だけど、僕にとっては簡単ではない。おそらく、リラックスして、心拍数を落ち着かすというトレーニングが最も難しいと思う。」
所属2年目の優勝
「僕にとって最後の素晴らしい週末はカタールだった。難しい状況の中、KTM機の力を最大限に引き出した。本当に素晴らしい週末。ルマン、ムジェロ... ザクセンリンクでも怪我をする直前まで、素晴らしい週末だった。レベルは本当に高かった。優勝を争うレースがあった。あるチームが何を提供してくれるか、別のチームが何を提供してくれるか、という問題ではない。もっと個人的なこと、つまり自分がどう感じているか、どのように交流しているのか、人々からどんなエネルギーをもらえるか、それが大切。 幼い頃からずっと、レッドブル・KTMで走ることが夢だと言ってきた。今でもその夢は変わらない。それがさらに大きな原動力となる。」
「昨年は心の平安を与えてくれた。アプリリアでは優勝するまでに3年を費やした。KTMではもっと早く勝てるだろう。重要なのは、積み重ねと継続性。だからこそ、このプロジェクトに投資することが重要。彼らはハングリー精神を示した。そうでなければ、この危機の中で気を緩めていただろう。しかし、ここにいる誰も警戒を怠っていない。彼らの目標は僕と同じで、他にはない。彼らは非常に野心的で、僕はそこが気に入っている。」
シーズンの目標
「目標は怪我する前よりも、もっと良くなることだけど、それだけでは十分ではない。良い結果だったけど、完璧ではなかった。KTM機から最大限のパフォーマンスを引き出したい。忍耐強く取り組んだおかげで、アプローチは非常に上手く行った。今年も同じ。自分自身に集中し、バイクから最高のパフォーマンスを引き出す。ペドロ・アコスタを見れば分かるように、バイクは非常に高いレベルにある。重要なのはバイクを理解すること。リアグリップやコーナリングスピードなど、必要な小さな部分を改善できるかどうか見てみよう。」
ライダー市場
「今年は特に集中して取り組むべき時期。おそらく、残留するだろう。それが最大の望み。重要なのは結果。結果を出し、チームに貢献し、リファレンスにならなければいけない。今年は良いチャンスがある。来年には多くの変化が予想される。この冬、KTMで見てきたもの、つまりハングリー精神、成長への意欲は、105%の力を発揮するためのモチベーションとなり、励みになる。期限は設けない。1戦ごとに取り組む。ホルヘとはいつもこう話す。『オースティンのような週末を22回』それが僕たちの目標。」
契約の優先事項
「最優先事項はKTMとの契約更新。それが望みであり、夢でもあるけど、全てを見極める必要がある。このプロジェクトを信じている。彼らが何を求めているのかを見極めることが重要。共に良い結果を達成できると確信している。目標は早く良い感触を掴むこと。」
ホルヘ・マルティンへのアドバイス
「彼にアドバイスはできない。僕よりも、はるかに多くの怪我を経験し、いつも力強く復帰してきた。僕が今回の怪我を通して気づいたのは、全てを少し考え直すようになったということ。考える時間ができた。不運な出来事の中で、僕は将来に向けて、より良い手段を見つけた。」
2024年4月の第3戦アメリカズGPでポールポジションからダブルウィンを飾り、『MotoGP™』で史上初、1949年に始まったチャンピオンシップで史上5人目となる異なる3メーカーのバイク(スズキ、ヤマハ、アプリリア)で優勝を成し遂げた31歳のスペイン人ライダー、マーベリック・ビニャーレスは、2月3日からマレーシアのペトロナス・セパン・インターナショナル・サーキットで開催される今年最初のオフィシャルテストに参加。史上初となる4メーカーのバイクで優勝という目標を視野に入れ、フル参戦16年目、プレミアクラス12年目のシーズンに向けて準備に取り組む。