ドゥカティ・レノボ・チームのフランチェスコ・バグナイアは、中量級のタイトルを獲得した4年前の再現に向け、マッチポイントとなった第19戦マレーシアGPの決勝レースで9番グリッドから「キャリアのベストの1つ」と称賛したスタートダッシュから来シーズンのチームメイト、エネア・バスティアニーニとのバトルに競り勝って優勝。プレミアクラスで史上15人目となる年間7勝目を達成し、タイトル獲得の条件の1つをクリア。
前日の転倒で左手の薬指を骨折し、崖っぷちに追い込まれたファビオ・クアルタラロは、そこから底力を発揮するように、12番グリッドからスタートダッシュを決めて1ラップ目に5番手、5ラップ目には4番手に浮上。4位以下ならタイトル争いに終止符が打たれる可能性がある中、7ラップ目にマルク・マルケスを追い抜いて3番手に浮上すると、後方からマルコ・ベツェッキが追い上げてきたが、最後までポジションを堅守。
一方で、数字上、可能性が残っていた総合3位アレイシ・エスパルガロと総合4位エネア・バスティアニーニは、10位と2位。タイトル争いから脱落した。
19戦が終了した時点で、フランチェスコ・バグナイアとファビオ・クアルタラロのポイント差は23。クアルタラロが連覇に向けて逆転する唯一の手段は、第10戦ドイツGP以来となる優勝。
決戦の舞台となるサーキット・リカルド・トルモにおける2019年昇格組の2人の結果は、次の通り。
フランチェスコ・バグナイア
2019年:負傷欠場
2020年:17番グリッド/転倒リタイア、8番グリッド/11位
2021年:2番グリッド/優勝
ファビオ・クアルタラロ
2019年:ポールポジション/2位
2020年:11番グリッド/転倒後14位、11番グリッド/転倒リタイア
2021年:8番グリッド/5位
『MotoGP™』が始まった2002年以降、最終戦までタイトル争いがもつれ込んだのは、2006年、2013年、2015年、2017年の4回。バレンティーノ・ロッシが転倒し、ニッキー・ヘイデンが8ポイント差を逆転した2006年とロッシが最後尾からスタートし、ホルヘ・ロレンソが優勝した2015年の2回。
モンスターエナジー・ヤマハのチームプリンシパル、リン・ジャービスは、2006年を引き合いに出し、「どんなことでも起こり得る」と逆転の可能性を強調すれば、ドゥカティ・コルセのスポーティングディレクター、パウロ・チャバッティは、1年前に表彰台を独占したバレンシアで、「ドゥカティはバレンシアで勝たなければいけません」とコンストラクターオーダーを発令し、ファビオ・クアルタラロの優勝を阻止することを宣言。
アウグスト・フェルナンデェス対小椋藍
ポイントリーダーとしてセパン・インターナショナル・サーキットに乗り込んだ小椋藍は、初優勝を挙げた第6戦スペインGP、2勝目を挙げた第12戦オーストリアGPに続き、3度目のポールポジションからスタートし、ホールショットを決めたトニー・アルボリーノを追走。最終ラップに今季4勝目を狙ってトップに飛び出した瞬間に痛恨の転倒を喫し、第5戦ポルトガルGP以来今季2度目の転倒リタイア。
3.5ポイント差を追うアウグスト・フェルナンデェスは、6番グリッドからなかなか前に出られない状態が続いたが、最終ラップに1人を抜いて4位。13ポイントを加算して、ポイントリーダーに再浮上した。
2人のポイント差は9.5。フェルナンデェスが昨年3位を獲得したバレンシアで3位以内に進出すれば、ライバルの結果に左右されずに『Moto2™』12人目のチャンピンとなるが、サーキット・リカルド・トルモでは毎年接戦が展開され、フィリップアイランド・サーキットでスペイン人ライダーが転倒することも、セパン・インターナショナル・サーキットで小椋が転倒することも予想できなかったことから、チェッカーフラッグが振り下ろされるまでは、タイトルの行方は決して分からないだろう。
アウグスト・フェルナンデェスが来季プレミアクラス昇格前にタイトルを獲得するか、小椋藍が日本人ライダーとして、原田哲也(1993年)、坂田和人(1994年/1998年)、青木治親(1995年/1996年)、加藤大治郎(2001年)、青山博一(2009年)に続く6人目の王者、『アジア・タレント・カップ』出身者としては初めてのチャンピオンになるか。2週間後の11月6日、現地時間12時20分、日本時間20時20分にシーズンファイナルレースがスタートする。