開幕戦ポルトガルGPは今週末、通称ポルティマオ・サーキットこと、アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェで3月24日(金)に初日、25日(土)に公式予選と『MotoGP™ Sprint(スプリント)』、26日(日)にレースを開催。開幕前日の23日(木)には、写真撮影と3部構成のプレスカンファレンス、さらにオフィシャルポドキャストを含めたライブ中継の配信が計画されている。
5メーカー、11チーム、22人のレギュラーは、昨年11月の最終戦バレンシアGP終了後から3回、計6日間のオフィシャルテストをバレンシアのサーキット・リカルド・トルモ、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキット、ポルトガルのポルティマオ・サーキットで実施。2006年以来17年ぶりとなる欧州での開幕戦に向けて準備を進めてきた。
ドゥカティ
2007年以来15年ぶりにトリプルクラウンを達成したドゥカティは、ファクトリーチームと3つのサテライトチーム、プリマ・プラマック・レーシング、グレシーニ・レーシング、ムーニー・VR46・レーシング・チームに4台の2023年型と4台の2022年型を供給。
ファクトリーチームは、王者フランチェスコ・バグナイアと総合3位エネア・バスティアニーニを起用。チャンピオンを証明するゼッケンナンバー1を選択したバグナイアは、2週間前に当地で開催されたオフィシャルテストの最終日にスプリントのシミュレーションとして、2回の連続12ラップを実行。さらに、オールタイムラップレコードを大幅に更新するなど、仕上がりの良さを見せれば、バスティアニーニも連続12ラップにトライしてデータを収集し、ファクトリーチームからのデビュー戦に向けて準備に取り組んだ。
ジュニアチーム的存在のプリマ・プラマック・レーシングは、総合8位ヨハン・ザルコと総合9位ホルヘ・マルティンを継続起用。2023年型が供給され、3度目のオフィシャルテストでは、ザルコが総合2番手、マルティンが総合8番手に進出。
チャンピオンマシンの2022年型が供給されるグレシーニ・レーシングの総合17位アレックス・マルケスと総合20位ファビオ・ディ・ジャンアントニオ、ムーニー・VR46・レーシング・チームの総合12位ルカ・マリーニと総合14位マルコ・ベツェッキは、プレシーズン最初のオフィシャルテストから際立つ走りを見せ、伏兵的な存在になる可能性を証明。バレンシアとセパンで総合1番手に進出したルカ・マリーニ、ホンダ機から乗り換えたアレックス・マルケスに注目が集まる。
ヤマハ
サテライトチームを失ったが、ファクトリーチームのモンスターエナジー・ヤマハに注力。今年最初のオフィシャルテストで昨年の課題に挙げていたトップスピードの向上を確認すれば、総合2位ファビオ・クアルタラロは、2021年と2022年に優勝を挙げたサーキットに戻って来ると、課題に挙げていた新品タイヤを装着した際のパフォーマンスを向上させて総合3番手に浮上したが、総合19位フランコ・モルビデリが以前の走りを取り戻すことができるのかどうかに注目が集まる。
アプリリア
コンストラクター部門、チーム部門、ライダー部門で過去最高位を獲得し、コンセッションの優遇措置から除外された後、伏兵から有力候補への昇格に向けて、全体的なマシンの戦闘力向上を図っただけでなく、サテライトチームを初起用。ファクトリーチームのアプリリア・レーシングで継続起用する総合4位アレイシ・エスパルガロと総合11位マーベリック・ビニャーレスに加え、クリプトデータ・RNF・チームの総合10位ミゲール・オリベイラと総合22位ラウール・フェルナンデェスというラインナップを整え、プレシーズンでは、ドゥカティの対抗馬として躍進。
右前腕の痛みを訴えたアレイシ・エスパルガロは、3月14日に手術を受けたが、過去の例から、大きな影響がないと予想され、当地で優勝経験がある地元出身のミゲール・オリベイラは連続14ラップ、異なる3メーカーでの優勝に期待が高まるマーベリック・ビニャーレスは連続18ラップのロングランを実行し、緒戦に向けて準備を進めた。
KTM&ガスガス
プレシーズンでは、予定通りにものごとが進まず、期待を下回ったことを認め、新加入の総合5位ジャック・ミラーと復帰した総合16位ポル・エスパルガロは、プレシーズンを通じて快適さを追求すれば、エース格に指名された総合6位ブラッド・ビンダーは、最終日にシミュレーションとタイムアタックを実行して総合9番手まで挽回。
唯一の新人としてプレミアクラスに初挑戦する中量級王者アウグスト・フェルナンデェスは、3日間のシェイクダウンテストを含めて、計9日間のテストに取り組み、ステップ・バイ・ステップで適応作業に専念。最終日には、連続20ラップのロングランを実行して、デビュー戦に備えた。
ホンダ
コンストラクター部門で初めて最下位に低迷したが、2017年から2018年以来となる本格的なフィジカルトレーニングに専念することができたマルク・マルケスを筆頭に、元王者ジョアン・ミル、終盤に2勝を挙げたアレックス・リンス、右手の負傷から回復した中上貴晶と強力なラインナップを整え、トリプルクラウンの奪回を目指してマシンの改善に集中。
スズキ機からホンダ機に乗り換えたジョアン・ミルは、適応作業に専念すれば、アレックス・リンスはセパンとポルティマオでスプリントのシミュレーションを実行。マルク・マルケスは最終日だけ開幕戦に向けて準備に取り組み、新しいクルーチーフとの二人三脚を始めた中上貴晶は、2度の連続10ラップにトライ。シーズンを通じて、どこまで巻き返せるかに注目。
エンジン&エアロパッケージ
開幕前日にチームは、シーズンに使用するエンジンを封印。エアロパッケージのホモロゲーションを取得。エアロパッケージはシーズンに1度だけ、アップデートが可能。シャーシやスイングアームは、シーズン中にアップデートが可能であることから、第4戦スペインGP後のオフィシャルテストが重要となる。
Moto2™
技術規則の改訂により、オフィシャルエンジンサプライヤーのトライアンフは、回転数の制限が増加した新型エンジンを供給。通常は3戦ごとに、メンテナンスのために交換されることから、最初のサイクルは、3月14日から2日間のプライベートテスト、3月17日から3日間のオフィシャルテスト、開幕戦のポルトガルGP。緒戦終了後に回収され、第2戦アルゼンチンGP以降に使用するエンジンがチームに供給される。
最多26人のユーザーを抱えるカレックスは、新型シャーシを供給。フォワード・レーシングはオリジナルのシャーシを投入することから、フレーム、スイングアーム、フェアリングなどのアップデートやプライベートテスト日数などのコンセッション、優遇措置が授与される。
15チーム30人のレギュラーライダーが参戦するシーズンにおいて、王者アウグスト・フェルナンデェスがプレミアクラスに昇格したことから、注目が集まる総合2位小椋藍は3月上旬にトレーニングアクシデントが原因で左手首を脱臼骨折したことから、予定していたプライベートテストとオフィシャルテストをキャンセル。緒戦の参戦は微妙。
そのプライベートテストとオフィシャルテストで傑出する速さを見せたのは、総合5位ペドロ・アコスタ。総合15位フェルミン・アルデグエ、総合3位アロン・カネト、総合10位ソムキアット・チャントラ、総合19位サム・ロウズ、総合4位トニー・アルボリーノらが続いたが、総合8位アロンソ・ロペスは体調不良だった。
『スーパーバイク世界選手権』から転向してきた野左根航汰は、トライアンフ製エンジンを搭載したカレックス機を初試乗したプライベートテストで開始早々に転倒。オフィシャルでも2日目と3日目に転倒を喫したことが影響して、2.5秒差の総合27番手。
プレミアクラスから転向してきたダーリン・ビンダー、軽量級から昇格してきた王者イサン・グエバラ、総合2位セルジオ・ガルシア、総合3位デニス・フォッジャ、『Moto2™欧州選手権』王者として復帰するルーカス・トゥロビッチらのデビュー戦に注目。『Moto2™欧州選手権』と『MotoE™ワールドカップ』から昇格してきたアレイシ・エスクリチは、プライベートテスト初日に転倒した際に足首を負傷。開催前日にメディカルセンターでメディカルチェックを受ける。
Moto3™
14チーム28人が参戦する軽量級では、タイトル争いを展開したトップ3が中量級に昇格したことから、タイトル争いの主役に指名されるのは、総合4位に進出した佐々木歩夢を筆頭に総合5位デニス・オンジュ、総合6位ジャウメ・マシア、総合7位鈴木竜生。
オフィシャルテストでは、2年目の総合8位ディオゴ・モレイラ、総合10位ダニエル・オルガド、総合13位ダビド・ムニョスが成長した走りを見せ、参戦5年目を迎えるリッカルド・ロッシが最終日にオールタイムラップレコードを突破する1番時計を刻み、キャリアで初めてオフィシャルテスト総合1番手に進出。
チームを移籍した鳥羽海渡と山中琉聖、2年目の古里太陽、三度目となる軽量級で再起を賭けるロマーノ・フェナティ、史上初となる『レッドブル・ルーキーズ・カップ』と『ジュニアGP世界選手権』を同時に制したダブルチャンピオンのホセ・アントニオ・ルエダらにも注目。
オフィシャルテスト3日目に転倒して右肩を脱臼したロレンソォ・フェロンはメディカルチェックを受ける。