熾烈を極めるタイトル争いは、第18戦タイGPが終了した時点で、総合1位ホルヘ・マルティンと総合2位フランチェスコ・バグナイアのポイント差は17。残り2戦74ポイントのタイトル争いは、ペトロナス・セパン・インターナショナル・サーキットとサーキット・リカルド・トルモが舞台となり、今週末の第19戦マレーシアGPが終了した時点で、2人のポイント差が37ポイント差以内なら、3年連続の最終戦決着となる。
今回、『500cc』から『MotoGP™』に移行した2002年以降、最も接戦のタイトル争いが繰り広げられたシーズンを回想する。
2006:バレンティーノ・ロッシ対ニッキー・ヘイデン
チャンピオンシップ史上、最も象徴的なタイトル争いの1つは、レジェンド同士の対決となった2006年。ラスト3戦目の第15戦日本GPが終了した時点で、ニッキー・ヘイデンがジャコモ・アゴスチーニ以来史上2人目となる6連覇を狙うバレンティーノ・ロッシに対して、アドバンテージを12ポイント差に広げていたが、第17戦ポルトガルGPでヘイデンがプレミアクラス1年目のチームメイト、ダニ・ペドロサの転倒に巻き込まれる形で転倒し、シーズン初めての0ポイント。
ロッシはトニー・エリアスに0.002秒差で競り負け、フィニッシュライン手前で5ポイントを失ったが、シーズン初めてポイントリーダーに飛び出し、8ポイント差のアドバンテージを持って、2003年と2004年に優勝を挙げた最終戦バレンシアGPの舞台サーキット・リカルド・トルモに乗り込んだが、ポールポジションからスタートしたにも関わらず、1ラップ目7番手に後退すると、5ラップ目に転倒。最後まで走り13位でゴールしたが、ヘイデンが3位を獲得。5ポイント差で上回り、感動的な逆転劇が起こった。
2015:バレンティーノ・ロッシ対ホルヘ・ロレンソ
ヤマハのファクトリーチームに所属する両雄の対決となった2015年。2009年以来2度目の一騎打ちとなり、チャンピオンシップ史上、最もスペクタクルなレースの1つなった第15戦オーストラリアGPが終了した時点で、バレンティーノ・ロッシが11ポイント差のアドバンテージを得たていたが、第16戦マレーシアGPでマルク・マルケスを転倒させたことで、最後尾からスタートするグリッドペナルティが科せられ、最終戦バレンシアGPは9列目26番グリッドから4位まで挽回したが、優勝を挙げたホルヘ・ロレンソが7ポイント差を逆転。遺恨を残す結末となった。
2017:マルク・マルケス対アンドレア・ドビツィオーソ
チャンピオンシップの覇権を握る日本勢に挑んだドゥカティが躍進。卓越したライディングスキルを武器にシーズンを通じて、何度もマルク・マルケスとのバトルを繰り広げたアンドレア・ドビツィオーソは、ラスト3戦目の第16戦オーストラリアGPが終了した時点で、33ポイント差。
第17戦マレーシアGPでタイトル争いに終止符が打たれる可能性があったが、チームメイト、ホルヘ・ロレンソの支援を受けたかどうか分からないが、シーズン6勝目を挙げて、21ポイント差に接近。最終戦の逆転という夢を繋いだが、4ポイントを加算すれば、2年連続4度目のタイトル獲得に王手をかけたライバルの目の前で痛恨の転倒を喫した。
2022:フランチェスコ・バグナイア対ファビオ・クアルタラロ
第10戦ドイツGPが終了した時点で、アンドレア・ドビツィオーソの後任に指名され、ドゥカティのエースとしてファクトリーチームに昇格したフランチェスコ・バグナイアは2019年同期であり、2021年王者であるファビオ・クアルタラロから91ポイント差の総合6位に位置。
後塵を拝していたが、第11戦TTアッセンから怒涛の4連勝で巻き返し、ラスト3戦目となった第18戦オーストリアGPで2戦連続の3位を獲得して、ポイントリーダーに飛び出すと、第19戦マレーシアGPで7勝目。2ポイントを加算すれば、チャンピオンとなる条件を得て最終戦バレンシアGPを迎えると、巨大な重圧を受けながらも9位でチェッカーフラッグを受け、奇跡的な逆転劇を完遂。イタリアのバイクを駆けるイタリア人ライダーのチャンピオンが1972年以来50年ぶりに誕生した。
2023:フランチェスコ・バグナイア対ホルヘ・マルティン
週末の新たなフォーマットが導入されたことで、1戦で逆転が可能なポイント数が25ポイントから37ポイントに拡大された2023年にタイトル争いを繰り広げたのは、前年度王者フランチェスコ・バグナイアと爆発的な速さを武器にティソ・スプリントで圧倒的な強さを誇示したホルヘ・マルティン。
ラスト2戦目となった第19戦カタールGPで2人のギャップが21ポイント差に広がったが、最終戦バレンシアGPのショートレースでマルティンが9勝目を挙げ、14ポイント差に接近。ホームレースでの逆転に望みを繋げたが、バグナイアが優勝を挙げ、チャンピオンに輝いた。